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エポキシ樹脂-エポキシ樹脂と硬化剤の大分類

 前回はエポキシ樹脂の教科書を幾つか紹介しました。しかし、読むべき教科書が決まっても、数百ページもある本をずっと読んでるわけにはいきません。それに読んでいても具体的なイメージがわかず、理解できない部分がたくさんありました。

 そこで、教科書で解説している内容のイメージをつかむために、教科書に載っているエポキシ樹脂を入手して、いろいろと触ってみることにしました。

 

 エポキシ樹脂はそれほど大きな構造の違いはなく、末端基もグリシジルエーテルか脂環式のどちらかだったので、比較的容易に理解できました。

 エポキシ樹脂は大きく分けて、汎用エポキシ樹脂と特殊エポキシ樹脂に分けられます。汎用エポキシ樹脂というのは、ビスフェノールAのグリシジルエーテルで、重合度による分子量の違いで、色々な種類があります。これを大別すれば液状と固形です。

 特殊エポキシ樹脂にはたくさんの種類がありますが、大きく分ければ、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、グリシジルアミン、グリシジルエステル、臭素化ビスフェノールAグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂になります。

 

 次に硬化剤を選ぶのですが、あまりにも種類が多く、骨格も全く異なるのでどれを選んでいいか、まったくわかりませんでした。かろうじて分かったのは、硬化剤はアミン系、酸無水物系、フェノール系に分類できることです。しかし、それらの中からどう選ぶのか、見当もつきません。

 

 開発対象の製品は多層プリント配線板用の積層板に適用する樹脂でした。その頃、一般的に積層板には、アミン系硬化剤であるジシアンジアミド(DICY:Dicyandiamide)という硬化剤が使われていました。

 このジシアンジアミドは有名な潜在性硬化剤で、固形エポキシ樹脂に混ぜておいても室温ではほとんど反応せず、可使時間が半年ほどあります。にもかかわらず、160℃以上に加熱すれば、1時間程度でほぼ完全に硬化し、ガラス転移温度(Tg:Glass Transition Temperature)が130℃ぐらいになるという優れものです。機械的性質も耐熱性も、プリント配線板として十分使える値を示します。

 ですから、これに代わる硬化剤を探すのは、相当な困難が予想されたので、硬化剤はジシアンジアミドに固定して、まずはエポキシ樹脂だけを変えてみることにしました。