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エポキシ樹脂-特殊エポキシ樹脂-Cre.Nov.EP

 次に紹介するのは、半導体封止材(ICパッケージ)に多用されているクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(Cresol Novolac Epoxy Resin : Cre.Nov.EP)です。おそらく、特殊エポキシ樹脂の中では、最も使われている樹脂だと思います。主な用途は電気絶縁用途です。このような構造をしています。

出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 55 (2003)

 

 この樹脂はクレゾールノボラック樹脂にエピクロロヒドリンを付加したものです。

 

 出典:垣内弘編著, “新エポキシ樹脂”, 昭晃堂, p. 40 (1985)

 

 原料のクレゾールノボラック樹脂は、クレゾールとホルムアルデヒドから合成されます。

この式はフェノールノボラックの合成反応式ですが、クレゾールノボラックはベンゼン環に1個ずつメチル基が付加したものです。

 

 出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 175, 181 (2003)

 

 クレゾールあるいはフェノールのノボラック樹脂はフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂)にも使われます。フェノール樹脂として使うときは、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)などを用います。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてもかなり使用されています。

 特に半導体封止材では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をフェノールノボラックまたはクレゾールノボラックで硬化させる組成が一般的です。

 エポキシ樹脂にはフェノールノボラックよりもクレゾールノボラックの方が圧倒的に多く使用されます。その理由としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂は融点が低く、半固型なので使いにくいことと、硬化した樹脂のガラス転移温度(Tg)がクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の方が高いことが挙げられます。

 汎用エポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂と比べても、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の方が、高いTgの硬化物が得られます。例えば、これらの樹脂をジシアンジアミドで硬化させると、前者のTgは110-120℃ですが、後者は150-160℃になります。このようにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性の高い硬化物を作れますが、価格もけっこう高いので、用途は限られてしまいます。私がこの樹脂を使って配合設計していた頃は、汎用エポキシ樹脂の2倍ほどの価格でした。