エポキシ樹脂の硬化剤については、フェノール系、酸無水物系、アミン系の硬化剤に分けて紹介しました。今回は硬化促進剤の紹介です。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂と硬化剤を混合したワニスや粉体などに混ぜて、硬化反応を促進するために使われます。硬化剤と硬化促進剤の主な違いは以下の通りです。
◎硬化剤
・硬化物の主骨格を形成する.
・硬化物物性に大きな影響を与える.
・活性水素当量がエポキシ基に対して,ほぼ当量.
◎硬化促進剤
・硬化速度を制御する.
・硬化温度を制御する.
・エポキシ樹脂の質量に対して,0.1~2.0%.
液状のアミン類などの硬化剤は室温でも反応が始まるので、硬化促進剤を必要としない場合が多いですが、同じ液状の硬化剤の酸無水物の場合には、比較的反応が遅いので、硬化促進剤を用いるのが普通です。
硬化促進剤は、第三級アミン類、イミダゾール類、リン化合物に分類されます。これらはどの種類の硬化剤に対しても促進作用を示します。硬化剤と硬化促進剤の組合せで、特に相性がいいという話はあまり聞いたことがありません。どのような組み合わせでも、促進剤として有効だと思います。
硬化促進剤として使える化合物は数多くありますので、分かりやすくするために、それぞれの分類で最低限の具体例を紹介します。
最初は第三級アミン類です。
DMP-30:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール
(2,4,6-Tris(dimethylaminomethyl)phenol)
DMP-30は昔から有名な硬化促進剤で、1967年に出版された Henry Lee,Kris Neville,”Handbook of Epoxy Resins” にも載っています。
液状ですが揮発性が低く、アミン類としては臭いもそれほど刺激性はありません。欠点としては、他の第三級アミンよりも、価格が高いことです。しかし、使う量はエポキシ樹脂に対して、通常1%以下ですから、組成物全体に対する価格への影響は僅かです。
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)
DBUもDMP-30と同じくらい有名で、よく使われています。
性状もDMP-30に似ていて、毒性も低いようです。
次はイミダゾール類です。
2E4MZ-CN:1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール
(1-(2-Cyanoethyl)-2-ethyl-4-methylimidazole)
2PZ-CN:1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾール
(1-(2-Cyanoethyl)-2-phenylimidazole)
どちらもイミダゾール類の中では使いやすい硬化促進剤です。2E4MZ-CNは融点が30℃ほどの半固形、2PZ-CNはさらさらの粉末です。これらのイミダゾール類が使いやすいのは、シアノエチル基のお蔭で、結晶性が弱く、エポキシ樹脂に溶けやすいことです。汎用溶媒にもよく溶けますので、ワニスにするときも簡単です。
最後はリン化合物です。
TPP:トリフェニルホスフィン
(Triphenylphosphine)
硬化促進剤に多用されるリン化合物といえばTPPです。フェノール系硬化剤を使用するときは、特に多用されているようです。もちろん、他の硬化剤にも使えます。
融点が約80℃の粉末で、毒性も低く、扱いやすいです。
ここに挙げた硬化促進剤を試してみて、望ましい結果が得られた促進剤と同種類の化合物を、いくつか比較してみるといいと思います。
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