2年ほど前に書いた「エポキシ樹脂-硬化剤ジシアンジアミド」の続きです。これまでに提案されている反応機構を紹介します。
一般的には以下の反応式ような、アミノ基の活性水素だけが反応すると考えられます。
出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 259-260 (2003)
でも、反応機構は違うと思います。
エポキシ樹脂とジシアンジアミドを混合して170 ℃で硬化させた場合、硬化前後の赤外線スペクトル (IR)が大きくことなるのです。2,200 cm-1付近のシアノ基 -C≡N に由来するピークがかなり減って、1680 cm-1付近のカルボニル基=C=Oに由来する大きなピークが出現するのです。
そこで、以下の反応機構が提案されました。
出典:加門隆,佐伯健作,高分子論文集, Vol. 34, No .7, p. 537-543 (1977)
シアノ基がカルボニル基に変化しています。IRスペクトルの結果と一致します。
ただし、この反応はアミノ基の反応よりもずっと遅いようで、ジシアンジアミドを4官能としてエポキシ樹脂に配合した場合には、シアノ基はあまり消費されません。私の場合は、ジシアンジアミドは6官能としてエポキシ樹脂に配合していました。その方が銅張積層板のガラス転移温度(Tg)やはんだ耐熱性、吸水率などが圧倒的によかったからです。
コメントをお書きください
KY (金曜日, 16 12月 2022 20:40)
お世話になります。
以前もコメントさせて頂いたKYです。
一点お伺いしたいのですが、一部メーカがBisAエポキシ/DICYの配合重量比を100/8で提案しています。(BisAエポキシのEEW=190は多い)
化学量論比と些か乖離があるかと思いますが、この配合比に対する柴田様のコメントを頂けませんか。
以上、宜しくお願い致します。
KY (金曜日, 16 12月 2022 20:41)
すみません、誤記がありましたので再送です。
お世話になります。
以前もコメントさせて頂いたKYです。
一点お伺いしたいのですが、一部メーカがBisAエポキシ/DICYの配合重量比を100/8で提案しています。(BisAエポキシのEEW=190が多いです)
化学量論比と些か乖離があるかと思いますが、この配合比に対する柴田様のコメントを頂けませんか。
以上、宜しくお願い致します。
柴田勝司 (土曜日, 17 12月 2022 10:16)
KYさん、コメントいただき、ありがとうございます。
私の経験では、Dicyは6官能と考えましたので、Dicyの分子量84.08を6で割りますと、1当量は14.01になります。エポキシ当量190の樹脂を100部用いた場合、Dicyの量は7.4部です。
ですから、あるメーカーさんが100/8を推奨しても、それほど違和感はありません。硬化促進剤にイミダゾール類などを使う場合には、Dicyはもう少し少ない方が、良好な物性が得られると思います。
あくまで私個人の考え方ですが、ご理解いただけたでしょうか。
KY (月曜日, 19 12月 2022 13:18)
柴田様
お世話になります、KYです。
内容承知しました。
私の計算が間違っていました。
今回も大変勉強になりました。
今後ともよろしくお願いします。