はじめに

 今はもうなくなってしまいましたが、日立化成(株)という会社で、1980年の入社から、2015年の定年退職まで、約35年間研究開発業務に携わってきました。その35年間のうち、32年間は研究所に在籍していました。実験が好きで、管理職になってからも実験は続けました。そうして、3つの技術を開発しました。プリント配線板用フェノール硬化エポキシ樹脂、エポキシ接着フィルム、熱硬化性樹脂複合材料リサイクル技術です。

 開発対象は異なりましたが、研究開発は同じようなやりかたで進められました。いろいろと工夫して少しずつ効率を上げていきました。入社して3年間が経った頃からは、研究所が設定した、報告書 (1報/年・人)、特許 (2報/年・人)、発表 (1件/年・人) のノルマを2倍から3倍で達成できるようになりました。40歳で管理職になってからは、グループメンバー全員のノルマも同様に、2倍から3倍で達成しました。

 研究効率を上げる方法に関する本などを探したのですが、概念的な内容が多く、高分子化学の研究の効率を上げる具体的な方法は見つかりませんでした。ここでは、化学系企業内での研究開発を高効率化するための方法を、思いつくまま順不同で、ご紹介したいと思います。化学実験の高効率化や分析機器の効率的利用法だけでなく、調査の仕方、報告書の作り方などでも、少しでも効率を上げようとしたので、これらについても具体的に紹介します。

 また、研究所では、一担当者の立場から10人ほどのグループの管理者の立場まで経験しましたので、様々な年代の方々のお役に立てるのではないかと期待しております。お役に立ちそうな方法がありましたら、ぜひお試しください。