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ビスフェノールFジグリシジルエーテルの異性体の比率

 

 エポキシ樹脂に関するブログで、2019/05/22に説明したビスフェノールFジグリシジルエーテルの異性体の比率に関して研究した論文を紹介します。

 

 ビスフェノールFの異性体の種類については以前のブログでも紹介しましたが、ここに再掲します。

 

出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 37 (2003)

 

 これらの異性体の比率をビスフェノールFジグリシジルエーテルであるDow Chemical社のDER-354の分析で明らかにしています。また、それぞれの異性体の硬化物のガラス転移温度(Tg)などについても評価しています。

 まず、高速液体クロマトグラフ(HLC)による比率の評価です。

 

 

出典:S. T. Knox, A. Wright, C. Cameron, J. P. A. Fairclough, “Well-Defined Networks from DGEBF—The Importance of Regioisomerism in Epoxy Resin Networks”, Macromolecules, vol.52, no.18, p.6861-6867 (2019)

 

 このクロマトグラムにある略号は、「pp」が「para-para」で上の図の「4.4'体」にあたります。同様に「po」は「para-ortho」で上の図の「4.2'体」、「oo」は「ortho-ortho」で上の図の「2.2'体」になります。検出器に使用されている紫外線の吸収量がすべて同じだとすると、pp/po/oo=4/4/2ぐらいの比率になるかと思われます。

 これらの異性体をそれぞれメタキシリレンジアミンで硬化させた場合のTgは以下の通りです。

 

出典:S. T. Knox, A. Wright, C. Cameron, J. P. A. Fairclough, “Well-Defined Networks from DGEBF—The Importance of Regioisomerism in Epoxy Resin Networks”, Macromolecules, vol.52, no.18, p.6861-6867 (2019)

 

 Tgが最も高かったのはppで、117℃、最も低かったのはooで約108℃です。その差は約10℃で、かなりの差があります。

 Tβは氷点下に存在する転移温度です。

 

 ビスフェノールFジグリシジルエーテルを使用する際は、これらの異性体のことを考慮する必要があります。